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フェアトレード(公正取引)って…?聞いたことはあるけれど馴染みは薄く、

気になるけれどイマイチ踏み込めない。私にはそんな、ちょっと空を掴むよ

うな存在だった。そしてフォトグラファーののこはこの春、フェアトレード

商品の春夏カタログの撮影を終えたばかりだった。さて、モノゴトには良い

タイミングってものがある!というわけでいざ、シャプラニールさんへの

取材をお願いしてみました。シャプラニールが出来たきっかけは?フェアト

レードって何なの?色とりどりの織物や伝統的な刺繍たちに囲まれながら、

シャプラニールのフェアトレード活動部門、クラフトリンク・チーフの小松

豊明(こまつとよあき)さんにお話を伺いました。

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any-まず始めに、シャプラニールができたきっかけを教えていただけますか?

小松:シャプラニールは1972年に設立されたのですが、その一年前の1971年にバングラデシュという国が独立しました。バングラデシュ(ベンガル人の国、という意味)は、元々パキスタンの一部だったんですが、パキスタン側から搾取的な扱いを受けていたんです。そのベンガル人たちが、自分たちの新しい国を作ろうと、独立戦争をしたんです。そして沢山の命が失われ、非常に混乱した中で世界各国から援助が入っていきました。その時、日本からも50名くらいの若者がボランティアとして派遣されました。そこで何をしたかと言うと、当時、バングラデシュの港には日本製のトラクターが眠っていて、それをどうにか活かせないかと思った。そこで、ボランティアの人たちは各農村に赴き、トラクターの使い方から修理の仕方までを教え、帰国しました。そのボランティアの中の何人かが、自分たちでももっと何か出来るんじゃないか、と思って立ち上げたのが、このシャプラニールです。

 

ののこがネパールを訪ねた際の農村部の様子(photo:nonoko kameyama)

ののこがネパールを訪ねた際の農村部の様子(photo:nonoko kameyama)

 

any-当時はどのような活動をされていたのですか?

小松:最初に行ったことは、国の復興の為には、まず子供たちの教育が重要なのでは?と考え、新宿の歩行者天国などで募金を集め、貯まったお金を持ってバングラデシュに行き、文房具を買って、子供たちに配りました。しかし翌朝町に出てみると、その文房具を売り歩いている子供たちの姿があったんです。そこで私たちは学びました。現地の人たちの立場に立って、今本当に必要なのは何なのか?を考えて活動しなければ意味のある活動は出来ない、と。恐らく子供たちは、学校へ行くよりもまず食べていかなければならない、という現実があったんだろうと思います。そこから試行錯誤を繰り返しながら活動を続けていったのですが、そこでひとつ柱になったのが、人口が圧倒的に多く、貧困層も多かった農村部です。農村部には「相互扶助グループ」、現地の言葉だと「ショミティ」と言うのですが、15~20人くらいの村人が、週や月に一回集まって自分達の問題を解決していこう、というグループがありました。そこで、例えば、貯蓄という概念や、お金を借りる、ということを出来るようにしたり(貧しい人たちには銀行も無かった)、識字率が低かったので、識字教室を開いたり。そういった現地の人たちに有益になる活動のサポートをしてきました。

 

水を飲むこども(photo:nonoko kameyama)

水を飲むこども(photo:nonoko kameyama)

 

『都市部での問題』

小松:そして最近は農村部の問題だけではなく、都市部の問題…例えば、親元を離れて路上で生活している、いわゆるストリートチルドレンや、お手伝いとして働いている女の子たちの厳しい生活環境などといった問題にも取り組もうということになりました。

そして、もうひとつの活動の柱となっているのがフェアトレードです。対象となっている生産者はほとんどが女性ですが、彼女たちの家庭も含め、生活向上を計っていこう、ということなのですが、この活動は1974年からスタートしているので、日本のフェアトレード団体の中では一番古いと思います。

 

ネパールの伝統的な織物の様子

ネパールの伝統的な織物の様子

 

『現地文化も守ること』

小松:今、私はそのフェアトレードの仕事をしていますが、その前はネパールに駐在して、そういった活動の統括をしていました。

フェアトレードの商品は、日本人が現地に行って指示するのではなく、必ず現地のパートナー団体と一緒に行います。現地の技術、素材、文化を活かした商品にしていこうということですね。文化の保全も大切にしています。例えば、山奥にある少数民族が持つ優れた手織りの文化、これらも放っておくと、恐らく海外からの輸入もの…化学繊維などが入ってくるので、元々の自分たちの文化である手織りの文化を残す為に立ち上がったNGO団体などもあります。

any-一律ではないと思うのですが、フェアトレードの商品の場合と、そうでない商品の場合の賃金の差というのがあると聞きました。それは一体どれくらいあるのでしょうか?

小松:そこははっきりしていない部分なんです。私たちは生産者の賃金レベルについて公表できますが、一般の企業はその辺をなかなか公表はしてくれないんですね。ただ、バングラデシュは繊維産業が発達しているので、有名ブランドの縫製工場が沢山あるのですが、そこで働く女性たちからは「女工哀史」的な…低賃金で過酷な労働条件だという話を聞くこともあります。それでも、村にいれば仕事は無いし、現金収入を得られる貴重な機会なので、多くの人が家族と離れて都会に出てきています。

 

バングラデシュにて、生産者と話をする小松氏

バングラデシュにて、生産者と話をする小松氏

 

any-シャプラニールさんが行っているフェアトレード商品の現状はどんな感じなのでしょう?

小松:私たちの活動規模はまだまだ限られたものなので、今後どんどん広げて行きたいと思っています。そうしないと生産者に仕事を作れないので。また、日本でも商品(洋服、雑貨等)のデザイナーなども募集しています。

any-シャプラニールさんの商品はどこで買えるのでしょう?

小松:全国各地の様々な店舗に卸しています。委託なので商品の返品も可能です。

any-(春夏のカタログを見ながら)これは舞子がモデルで、ののこが撮影をしたカタログですね。かわいい商品が沢山!販売はウェブでも行っているのですか?

 

model:maiko akutagawa  photo:nonoko kameyama

model:maiko akutagawa, photo:nonoko kameyama

 

小松:はい、店頭とウェブと両方あります。このカタログは会員の方に配布する他、店頭にも置かれます。

 

『フェアトレードという扱い』

小松:私たちは長らく「フェアトレード」という言葉を避けてきました。シャプラニールは海外協力団体なので、あくまでも生産者の『生活向上』というところに焦点を当てていた。それは今でも変わらないのですが、フェアトレードといった時にふたつ大きな目的があって、ひとつは『生産者の生活向上』、もうひとつは『現存の貿易構造の問題を変えていく』という、代替的な貿易手段としてのフェアトレードを進めていこう、というところがあります。私たちは今までは貿易構造の部分はあまり触れていませんでした。ただ“流行りもの”としてのフェアトレードという言葉に距離を置いていたのですが、実際、生産者の生活向上という最終目的は同じわけですし、実際に私たちが扱っている商品を生産している団体も、フェアトレード団体として国際的なフェアトレードネットワークに登録もしている。そんな中で、ここ数年シャプラニール自体は、根本的な構造問題をから見直そうという動きになり、貿易の問題についても考えないわけにはいかないということで、フェアトレードという言葉も積極的に使うようになりました。そして、日本の中にフェアトレードを広めていくことに貢献しよう、ということになってきました。今までフェアトレードの団体はそれぞれがばらばらに活動していたのですが、近年ではみんなでネットワークを作って情報の共有をしたり、勉強会を開いたりしています。

今、フェアトレードは日本の中でも関心が高まりつつありますが、まだまだ小さな市場。欧米に比べてもまだまだ小さな規模なので、今後は何とかそれを広げていこうと思っています。

 

『企業がフェアトレードに入るか否か』

小松:既存の貿易構造に問題があるという前提でフェアトレードを行っているので、既存の貿易構造の中にいる企業がフェアトレードに入ってくること自体が矛盾しているのではないか?という考えがあったり。でもその一方で、企業の協力があればフェアトレードが劇的に広がっていく、ということもあります。欧米では何故フェアトレードの商品があれだけ広まっているかというと、普通のスーパーでフェアトレードの商品、珈琲、紅茶、バナナなどが売られてるんですね。そうしてフェアトレードが広まっていった。まあ議論はあるにせよ、企業がどんどん参画して来ているのは間違いないですし、地方自治体なども興味を示してきています。そういったマスの部分の人たちが関わってきているので、今後広がるのではないかと思っています。

any-そろそろこの消費主義社会に嫌気がさして来ている人も多いと思うんです。ただ安いだけの商品を買っていればいいのか?と。でも実際、どうしたら良いのか、なかなか行動には移せないところがあります。

小松:ちょうど今、そういった事に関心が高まっている時代なんだと感じます。エコなんかもそうですが、資本主義一辺倒の経済システムや金融危機、食料問題等…何か間違っているんじゃないか?と。そういった意味でいうとフェアトレードは、現地の生産者の生活を変化させることに加え、私たち日本人自身の生活の変化を促していくという役割もあると思います。市民運動にも通じていると思います。100円均一の商品はなぜ安いのか?その裏にはそれなりの理由があるし、同じようなものが売っていた時、その選択によってどういったことが起こりうるのか?というのを考えて買い物をする。やっぱり買い物っていうのはすごく力があることですよね。一人一人が支払う金額は微々たるものでも、その消費が全世界の経済に結びついているわけで、あなどれない。そこは私たちも訴えていきたいと思っています。

なので、今回のカタログも『大切に暮らす』ということをテーマに制作しています。ネパールには色んな修理屋さんがあるんです。自転車、電気屋、洋服、靴…。道を歩いていれば布団の打直しの人が回ってたりする。壊れたから捨てる、ということはあり得なくて、みんなひとつのものを大事に使っている。それしか選択肢が無いっていうのもあるんだけど、それを私たちは逆に見習う必要があるんじゃないか、と思います。ただ、日本の場合は今、修理したほうが高くついちゃったりしますからね…。

 


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確かに、今の日本では、リペアするより買い替えるほうが安く済む。

けれどもそれは果たして『良いコト』なのだろうか?昔のモノが今の

モノと比較して赴き深かったり、味わい深い佇まいを持っていると感

じるのは、単にそれが“昔のモノだから”では無いような気がする。

私たちは“消費”という快楽の陰に、『良いモノ』を自ら“消失”して

しまってはいないか…。


今回、私たちは、フェアトレードやシャプラニールについてお話を

伺ったわけだったが、最後は日本における消費社会の話にまで至った。

それは、消費とフェアトレードが良い意味でも悪い意味でも深く繋がっ

ているからこそ。バレないだろうとひとりがポイ捨てする行為によって

街の景観がどれだけ変わるのか?ひとりがその商品の裏側について

ちょっと立ち止まって考えてみると世界がどれだけ変わるのか?

自分の心を満たしてくれるのは、もはや消費から得られる豊かさばかり

では無いはずの時代。私たち人間は、ちゃんと進化しているのだろうか…?

 

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真っすぐな瞳のこども。(photo:nonoko kameyama)

真っすぐな瞳のこども。(photo:nonoko kameyama)

 

 

=最後に、小松氏より読者へのメッセージをいただきました=

フェアトレードに対する関心が高まっていることを日々実感しています。フェアトレードを市民運動として捉えた場合、その主体は市民であるみなさん(私もですね)一人ひとり、ということになります。経済のグローバル化が極端に進んだ現在、日々の買い物が世界中の様々な地域で暮らすたくさんの人たちの生活に影響を及ぼしています。それを意識することが、現状を変えていくきっかけになるのです。お買い物といういちばん身近な行為を通して、あなたも海外協力に参加してみませんか。

フェアトレード、シャプラニールの活動についてもっと詳しく知りたい方は・・・

シャプラニールのサイト: http://www.shaplaneer.org/

楽天市場: http://www.rakuten.ne.jp/gold/craftlink/


 

<<お話を伺ったひと>>

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シャプラニール フェアトレード活動部門 クラフトリンク・チーフ

小松豊明(こまつとよあき)さん